予防の目的
予防歯科の目的は、お口の健康を生涯にわたって維持して、美しい歯を育てることです。小さなお子さまであれば、全ての歯が健康な状態を維持できる可能性があります。
成人でも、むし歯の再発予防や新たなむし歯の発症の予防、歯周病や口臭の予防が可能です。
毎日の歯磨きで歯垢を取り除くことが大切ですが、それだけではむし歯の原因となるバイオフィルムや飲食物やたばこの着色汚れは完全に落とせません。
歯科医院で定期的にプロフェッショナルケアを受けていただきながら、ご自宅での歯磨きなどのセルフケアを続けていただくことが大切です。
日本人は、歯が痛くなったら歯医者に行くといったイメージを持ちますが、欧米では「むし歯や歯周病から歯を守るために歯医者に行く」という考え方が定着しています。そのため、70歳時点での平均残存歯数に大きな差があります。
ご自身の歯は、一度失うと二度と元には戻らないため、日ごろから予防の意識を持っていただくことをおすすめします。
予防の重要性
日本は、予防歯科先進国と呼ばれる北欧の国と比べてむし歯の本数が多く、入れ歯を使用している高齢者の割合も大きくなっています。
このような差がある理由は、日本の「歯が悪くなってから歯科医院に行く」と、北欧の国の「歯を悪くしないために歯科医院に行く」という考え方の違いがあるためです。
歯が悪くなってから受診した場合、歯を削ることで負担が増え、歯の寿命が短くなる恐れがあります。
むし歯や歯周病の予防を心がけることで、結果的により多くの歯を残せるうえに、医療費を抑えられるのです。 歯を失うと食事を楽しめなくなり、心身の健康状態に大きな影響を及ぼします。
日本歯科医師会が推進している『8020運動(80歳で20本の歯を残そう)』のように、予防歯科の重要性が世間的に見直されています。
今日から予防の意識を持つようにしてはいかがでしょうか。
むし歯・歯周病になりやすい人とは?
むし歯と歯周病のリスクは患者さまによって異なります。リスク要因を把握して、適切に予防ケアを意識することが大切です。
むし歯になりやすい人の特徴
むし歯の原因となる「ミュータンス菌」が多い
口の中に、むし歯の原因となるミュータンス菌が他の菌と比べて多く生息していると、むし歯のリスクが高まります。
歯の質
歯質が強いとむし歯のリスクが低く、歯質が弱いとむし歯のリスクが高くなります。
唾液の量が少ない
唾液には、口の中の汚れを洗い流したり虫歯菌が出す酸を中和したりする働きがあるため、唾液が少ないとむし歯のリスクが高まります。
糖分をとる回数や量が多い
虫歯菌は、甘いものに含まれる糖を栄養源として増殖します。そのため、頻繁に甘いものを食べて口の中に糖が存在する時間が長いほどにむし歯のリスクが高まります。
お菓子のだらだら食べや飴をなめるなどは、口の中に糖が存在する時間が長くなるため注意が必要です。
磨き残しやすい環境・ブラッシング不足
歯並びが悪くて歯ブラシがすみずみまで届かなかったりブラッシングが苦手だったりすると、口内が不潔な状態が続きむし歯のリスクが高まります。
歯周病になりやすい人の特徴
唾液の量が少ない、口呼吸
歯周病菌は唾液によって洗い流されるため、唾液の量が少なかったり口呼吸で口内が乾いたりすると、結果的に歯周病が進行しやすくなります。
喫煙習慣がある
たばこは、歯茎の細胞を破壊したり、歯茎の血流を悪くしたりするため、喫煙習慣があると歯周病のリスクが高まります。
加齢
年齢とともに免疫力が低下して、歯周病のリスクが高まります。
ホルモンバランスの変化
妊娠や出産、閉経などを期にホルモンバランスが変化すると、歯周病が悪化する場合があります。
例えば、妊娠中は妊娠性歯肉炎といって、歯茎の腫れや出血などが増える場合があり、妊娠中に注意したい病気の1つとされています。
また、つわりの影響で歯磨きができず、歯周病が進行してしまう場合もあります。
ストレスが大きい
大きなストレスは免疫力の低下を招き、結果として歯周病が悪化しやすくなります。
噛み合わせが悪い
噛み合わせが悪く、特定の歯に大きな負担がかかることで歯周病のリスクが高まります。
お口の中の清潔を妨げる要因がある
歯並びが悪かったりブラッシングが苦手だったりして磨き残しがあると、歯周病のリスクが高まります。
当院の予防メニュー
当院では、患者さまの歯をお守りするために、次の予防メニューをご提供しております。
ブラッシング指導
歯を守るためには、日々のブラッシングがとても重要です。歯垢を丁寧に取り除くことで、むし歯や歯周病を防げます。
しかし、歯磨きの質が低くて磨き残しがあると、歯を守ることはできません。
当院では、患者さまのお口の状態を踏まえた効果的なブラッシング方法を丁寧に指導しております。
定期的な歯科健診やクリーニング
定期的な歯科健診や歯のクリーニングも歯を守るために必要です。
歯のクリーニングでは、ブラッシングで落とせない歯石の除去などを行います。
そして、お口の中を観察して、むし歯や歯周病の早期発見を目指します。
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
PMTCとは、プロが専門の機器で歯の表面についたバイオフィルムや歯石を取り除くクリーニング法です。
定期的に受けていただくことで清潔な口内環境を保ちやすくなり、むし歯や歯周病のリスクを低減できます。
また、歯の汚れが落ちることで、本来の白さを取り戻せることもメリットです。PMTCは歯を削らない処置のため、不快感や痛みを感じることはありません。
バイオフィルムは3ヶ月で再生するといわれているため、PMTCも3ヶ月ごとに受けていただくことをおすすめします。
フッ素塗布
フッ素塗布は、歯の表面に高濃度のフッ素を塗り、エナメル質を強化して虫歯菌が出す酸に強くする処置です。
また、虫歯菌が出す酸で溶け出した歯の成分が唾液の作用で元に戻る「再石灰化」を促す働きや、虫歯菌の活動を抑える働きもあります。
年3~4回の頻度で受けていただくことをおすすめします。
3DS(dental drug delivery system)
抗菌剤や除菌薬を注入したマウスピースを装着し、虫歯菌や歯周病菌を短期間で減らす方法です。
もともと、むし歯や歯周病のリスクが高い方に受けていただくことで、歯を守れる可能性が高まります。
カリエスリスク検査
むし歯のリスクを調べる検査です。
虫歯菌の数や唾液の量と質、過去の治療歴、食生活などからむし歯のリスクを数値化するため、むし歯予防の意識づけのきっかけになります。
定期健診でお口を守る
定期健診を受けていただくことで、むし歯や歯周病からご自身の歯を守れる可能性が高まります。
定期健診を受ける必要性や内容、流れをご紹介します。
定期健診を受ける目的
定期健診の目的は、お口の中が清潔に保たれているか、むし歯や歯周病はないかを確認することです。
生涯にわたり、ご自身の歯で食事をしていただくには、歯の健康維持やむし歯・歯周病の早期発見が必要です。
そして、これらの目的を達成するためには、定期健診が欠かせません。
すでに歯を失われている方は、これ以上歯を失わないためにも、定期健診や歯のクリーニング、入れ歯の調整などを受けていただくことが大切です。
まだ1本も歯を失っていない方も、このまま歯の健康を保てるように定期健診を受けていただくことをおすすめします。
定期健診で何するの?
むし歯や歯周病はないか確認するほか、歯周病を防ぐためのクリーニングを行います。
さらに、ブラッシング指導やフッ素の利用方法のアドバイスなどにより、歯の健康維持をサポートいたします。
そのほか、詰め物・被せ物の不具合の確認、お口の粘膜の点検なども行います。
定期健診・クリーニングの流れ
STEP.1 問診、検査
レントゲン検査、お口の中の視診、歯周検査などでお口の中の状態を詳しく確認します。
また、お口の中のお困りごとや自覚症状などをお聞きして、必要な検査や治療を検討いたします。
STEP.2 唾液検査(カリエスリスクテスト)
お口の中の細菌の種類や数、唾液の質や量などを調べ、むし歯のリスクを調べる検査です。
治療前と治療後に行うことで、治療効果を確認できます。
また、むし歯リスクを数値化できるため、ご自身に合った予防ケアの方法をご理解いただけます。
STEP.3 歯科衛生士によるクリーニング・ブラッシング指導
セルフケアでは取り除けない歯石や磨き残しによる歯垢などを除去します。
また、セルフケアの質と効率を高めていただくために、患者さまに適した歯ブラシやブラッシング方法をお伝えいたします。
STEP.4 フッ素塗布
歯のクリーニングにフッ素を塗布して、むし歯に強い歯を作ります。
フッ素入り歯磨き粉などが市販されていますが、歯科医院では高濃度のフッ素を使用できるため、より高い効果が期待できます。
STEP.5 セルフケア処方
セルフケアの質と効率を高めていただくために、歯磨き粉や歯ブラシの選び方や使い方をアドバイスいたします。
歯を守るためには、プロフェッショナルケアとセルフケアの両方が必要です。
当院では、プロフェッショナルケアをご提供するとともに、セルフケアの質や効率を高めるお手伝いをしておりますので、何かご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。